ニュースで「円安が進んだ」「ドルが買われた」と聞いても、為替レートの数字と実際の動きが結びつかず、戸惑うことがあります。1ドル=150円から151円になったとき、円高なのか円安なのか迷う方もいるのではないでしょうか。
為替相場は、海外旅行や輸入品の価格に関係するだけではありません。企業業績、物価、金利、株価などにも影響するため、経済の動きを理解するうえで欠かせないテーマです。この記事では、為替を学ぶときに押さえておきたい基本用語をまとめます。
為替とは
為替とは、現金を直接やり取りせずに、銀行振込や手形などを通じてお金を受け渡す仕組みを指します。
一般的な経済ニュースで使われる「為替」は、異なる国の通貨を交換する外国為替を意味することが多くなっています。日本円を米ドルに交換したり、ユーロを日本円に交換したりする取引が外国為替です。
外国為替市場では、企業、金融機関、投資家、中央銀行などが通貨を売買しています。その需要と供給によって、通貨同士の交換比率が変化します。
為替レート
為替レートとは、異なる通貨を交換するときの比率です。
たとえば「1ドル=150円」という為替レートは、1米ドルを交換するために150円が必要であることを表しています。
為替レートは常に同じではありません。通貨を買いたい人と売りたい人の数、各国の金利、経済状況、金融政策などを反映して変動します。
通貨ペア
外国為替では、2つの通貨を組み合わせて価格を表示します。この組み合わせを通貨ペアと呼びます。
代表的な通貨ペアには、次のようなものがあります。
- 米ドル/円:USD/JPY
- ユーロ/米ドル:EUR/USD
- ユーロ/円:EUR/JPY
- 英ポンド/米ドル:GBP/USD
USD/JPYが150円と表示されている場合は、1米ドルを買うために150円が必要という意味です。
通貨ペアの左側にある通貨を基軸通貨、右側にある通貨を決済通貨または相手通貨と呼びます。USD/JPYでは、米ドルが基軸通貨、日本円が決済通貨です。
円高と円安
円高とは、ほかの通貨に対する円の価値が上がることです。円安は、ほかの通貨に対する円の価値が下がることを指します。
米ドルと円の関係では、次のように考えると数字の動きを捉えられます。
| 為替レートの変化 | 円の動き | ドルの動き |
|---|---|---|
| 1ドル=150円から140円 | 円高 | ドル安 |
| 1ドル=150円から160円 | 円安 | ドル高 |
1ドルを買うために必要な円が150円から140円に減れば、円の価値が上がったことになります。反対に、必要な円が160円に増えれば、円の価値が下がったと考えます。
ドル高とドル安
ドル高とは、ほかの通貨に対する米ドルの価値が上がることです。ドル安は、米ドルの価値が下がることを指します。
米ドルと円だけを比べる場合、ドル高は円安と表裏の関係にあります。ドルが円に対して高くなれば円は安くなり、ドルが安くなれば円は高くなります。
一方で、「ドル高」という表現が米ドル全体の動きを指す場合もあります。米ドルが円に対して上昇していても、ユーロに対しては下落していることがあるため、どの通貨と比較しているのかを確認する必要があります。
実需
実需とは、輸出入や海外投資など、実際の経済活動に伴って発生する通貨の需要です。
日本企業が米国から商品を輸入し、代金を米ドルで支払う場合、円を売って米ドルを買います。反対に、日本の輸出企業が米ドルで受け取った代金を円に換える場合は、米ドルを売って円を買います。
このような企業の取引も、為替相場を動かす要因になります。
金利差
金利差とは、国ごとの金利水準の差です。為替相場を考えるときに、特に注目される要素の一つです。
一般に、投資資金は金利の低い通貨よりも、金利の高い通貨へ向かう傾向があります。米国の金利が日本より高い場合、円を売って米ドルを買う動きが増え、ドル高・円安につながることがあります。
為替市場は現在の金利だけでなく、今後の金融政策も織り込みます。中央銀行が利上げに向かうと予想されれば、その国の通貨が買われることがあります。
貿易収支
貿易収支とは、輸出額から輸入額を差し引いた金額です。輸出額が輸入額を上回る状態を貿易黒字、輸入額が輸出額を上回る状態を貿易赤字と呼びます。
輸出企業が海外で受け取った外貨を円に交換すれば、円を買う需要が生まれます。一方、輸入代金を支払うために外貨を買えば、円を売る需要が生まれます。
貿易収支と為替相場の間には、このような通貨の交換を通じた関係があります。実際の相場は、金利差や投資資金の移動など複数の要因によって動くため、貿易収支だけで方向が決まるわけではありません。
経常収支
経常収支は、海外との商品、サービス、投資収益などの取引状況を表す指標です。
経常収支には、主に次の項目が含まれます。
- 貿易収支:商品の輸出入
- サービス収支:旅行、運輸、知的財産権使用料など
- 第一次所得収支:海外投資から得られる利子や配当など
- 第二次所得収支:政府間の援助や個人間の送金など
日本では、海外への投資から受け取る利子や配当が第一次所得収支に計上されます。貿易収支が赤字であっても、第一次所得収支の黒字によって経常収支全体が黒字になる場合があります。
購買力平価
購買力平価とは、同じ商品やサービスは、通貨を換算すれば同じ程度の価格になるという考え方です。
たとえば、日本で1,000円の商品が米国で10ドルなら、単純な購買力平価は1ドル=100円となります。
実際には、輸送費、税金、人件費、商品構成などが国によって異なるため、為替レートが購買力平価と一致するとは限りません。それでも、通貨が長期的に割高なのか割安なのかを考えるための目安として使われています。
名目為替レートと実質為替レート
日常的に目にする1ドル=150円といった交換比率は、名目為替レートです。
実質為替レートは、名目為替レートに国内外の物価差を加えて調整した指標です。為替レートが変わっていなくても、日本と海外で物価の上昇率が異なれば、実質的な通貨の価値は変化します。
実質為替レートは、国内の商品が海外の商品と比べてどの程度高いのか、あるいは安いのかを考えるときに使われます。
実効為替レート
実効為替レートとは、一つの通貨を複数の通貨と比較し、貿易額などに応じて加重平均した指標です。
円の価値を確認するとき、米ドルとの交換比率だけでは、円全体の動きを判断できません。円が米ドルに対して下落していても、ユーロや英ポンドに対して上昇している場合があるためです。
実効為替レートを使うと、主要な貿易相手国の通貨に対する円の総合的な強さを確認できます。物価差を調整していないものを名目実効為替レート、物価差を調整したものを実質実効為替レートと呼びます。
変動相場制と固定相場制
変動相場制とは、外国為替市場の需要と供給によって為替レートが変動する制度です。日本、米国、ユーロ圏などでは、基本的に変動相場制が採用されています。
固定相場制は、自国通貨の価値を米ドルなどの特定通貨に連動させ、一定の範囲に保つ制度です。相場を維持するため、中央銀行が通貨の売買や金融政策による調整を行います。
変動相場制でも、政府や中央銀行が相場の急激な変動を抑えるために市場へ介入することがあります。
為替介入
為替介入とは、政府や中央銀行が外国為替市場で通貨を売買し、為替相場に影響を与えることです。
日本で円安を抑えるために行われる介入では、米ドルを売って円を買います。反対に、円高を抑える場合は、円を売って米ドルなどの外貨を買います。
為替介入は相場の方向や速度に影響を与えることがありますが、金利差などの大きな経済要因が変わらなければ、効果が長期間続かない場合もあります。
外貨準備
外貨準備とは、政府や中央銀行が保有する外貨建ての資産です。外国為替市場への介入や、海外への支払いに備える目的で保有されています。
主な外貨準備には、外貨建ての預金、国債、金、国際通貨基金に関係する資産などがあります。
円買い介入で米ドルを売る場合には、国が保有する外貨準備が使われます。
買値・売値とスプレッド
銀行や外貨両替、FX取引では、通貨を買う価格と売る価格が異なります。
金融機関が通貨を買い取る価格をビッド、金融機関が通貨を売る価格をアスクと呼びます。利用者の立場では、アスクで通貨を買い、ビッドで通貨を売ることになります。
ビッドとアスクの価格差がスプレッドです。スプレッドは、通貨を交換するときの実質的なコストの一つになります。
為替相場を見るときのポイント
為替相場は、一つの材料だけで動いているわけではありません。ニュースを読むときは、次の要素を組み合わせて考える必要があります。
- 各国の政策金利と今後の金融政策
- 物価上昇率や雇用などの経済指標
- 貿易収支と経常収支
- 株式や債券への国際的な資金移動
- 戦争や政治不安などの地政学的な要因
- 政府や中央銀行による為替介入
同じ経済指標が発表されても、市場が事前にどのような結果を予想していたかによって、為替相場の反応は変わります。発表された数字だけでなく、市場予想との差にも目を向けると、値動きの理由を追いやすくなります。
まとめ
為替レートは、異なる通貨を交換する比率です。米ドル/円が上昇した場合は、一般にドル高・円安、下落した場合はドル安・円高を表します。
為替相場には、金利差、貿易や投資に伴う実需、経常収支、金融政策、市場参加者の予想などが関係しています。円高・円安という結果だけを見るのではなく、どのような資金の動きが起きているのかを考えることが、為替を理解する手がかりになります。
経済ニュースでは、為替と金利、物価、企業業績が関連して取り上げられます。基本用語を押さえておくと、それぞれのニュースを個別に読むのではなく、経済全体のつながりとして捉えられるようになります。
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