経済ニュースでは、「金利上昇を受けて株価が下落した」「利下げへの期待から株価が上昇した」といった説明をよく見かけます。金利が動くと、企業が資金を借りるときの負担や家計の支出、債券から得られる利回りなどが変化し、その影響が企業業績や投資家の資金配分を通じて株価にも及びます。
利上げや利下げに対する株価の反応は、景気や企業業績によって変わります。景気回復の中で金利が上がっているのか、インフレへの警戒から金利が上がっているのかによっても、株式市場の受け止め方は変わってきます。
企業の借入負担
金利が上昇すると、企業が銀行から融資を受けたり、社債を発行したりするときの資金調達コストも上がることがあります。借入金が多い企業では支払う利息が増えて利益を圧迫しやすく、工場の建設や設備投資についても、借入金利が上がれば採算の計算が変わってきます。
支払利息の増加によって将来の利益がこれまでの予想を下回ると見られれば、株価も下がることがあります。金利上昇が株式市場で警戒される理由の一つです。
個人消費
金利の変化は、住宅ローンや自動車ローンなどを通じて家計にも影響します。返済に充てる金額が増えると、商品やサービスに使えるお金も減るため、住宅や自動車のように大きな金額を借りて購入する商品の需要が弱くなることがあります。
こうした動きが広がれば、住宅や自動車に関連する企業の売上にも影響が出ます。消費全体が弱くなれば、小売業や外食などにも波及するため、金利の変化は企業の借入負担とは別の経路からも業績に影響します。
株式と債券
投資家は、株式のほかに国債や社債などにも資金を振り分けています。金利が低い時期には債券から受け取れる利息も小さくなるため、配当や値上がりを期待して株式へ資金が向かうことがあります。
国債などの利回りが上がると、株式を売って債券へ資金を移す動きも出てきます。価格変動のある株式を持たなくても一定の利回りを得られるため、投資家が株式に求める収益率も高くなりやすくなります。
割引率
株価には、企業が将来生み出すと予想される利益やキャッシュフローを現在の価値に置き換えて評価する考え方があります。現在持っている100万円は運用すれば利息を得られるため、1年後に受け取る100万円は現在の100万円より低い価値として計算されます。
将来のお金を現在価値へ換算するときに使われる割合が割引率で、市場金利が上昇すると、この割引率も上がる方向に動きます。企業の利益予想が同じでも、将来得られる利益の現在価値が低くなれば、株価に付けられる評価も下がります。
| 金利 | 将来利益の現在価値 | 株価への影響 |
|---|---|---|
| 低下 | 高くなる方向 | 株価を支える材料 |
| 上昇 | 低くなる方向 | 株価を押し下げる材料 |
成長株
金利の影響は、企業の収益構造によって大きさが変わります。現在の利益はまだ小さく、数年後に大きく成長すると期待されている企業では、将来の利益が株価に多く反映されています。IT企業や新興企業などで見られる評価です。
金利が上昇すると、遠い将来に得られる利益ほど割引率の影響を大きく受けるため、将来の成長期待をもとに高い株価が付いている企業では評価が下がることがあります。長期金利が急に上昇したときに成長株が大きく売られる背景には、こうした株価評価の変化があります。
銀行株
銀行では、金利上昇が収益を押し上げることがあります。預金などで集めた資金を企業や個人へ貸し出しているため、貸出金利が上昇して預金金利との間にある利ざやが広がれば、収益の改善につながります。
金利上昇への予想が強まった時期に銀行株が買われることがあるのは、この収益改善が期待されるためです。金利が急速に上がって景気が悪化すると、融資先の経営が厳しくなり、貸し倒れに備える費用が増えることもあるため、銀行株では金利と景気の動きが合わせて意識されます。
景気回復期の利上げ
景気が強く、企業の売上や利益が増えている時期には、物価上昇を抑えるために中央銀行が利上げを進めることがあります。借入金利が上がって企業の負担が増えていても、それを上回るペースで利益が伸びていれば、株価が上昇することもあります。
利上げの発表後に株価が上がっている場合は、景気や企業業績の強さが金利上昇による負担より強く意識されていることがあります。
景気悪化期の利下げ
利下げが行われると、企業の借入負担が軽くなり、債券の利回りも低下する方向へ動きます。株式市場にとっては支えになる材料ですが、景気が大きく悪化したことを受けて利下げが行われる場合には、企業の売上や利益の減少も同時に意識されます。
利下げの発表後も株価が下がっているときは、金融緩和による効果より、景気悪化による企業業績への影響が強く見られている場合があります。同じ利下げでも、その時点の景気によって株価の反応は変わります。
市場予想
株式市場では、中央銀行が政策金利を変更する前から将来の政策が株価に反映されます。物価上昇が続いて利上げの予想が広がれば、企業の借入負担や割引率への影響も先に意識されるため、実際の利上げ前から株価が下がることがあります。
利下げについても、景気や物価の数字から金融緩和が近いと見られれば、政策変更前から株価が動きます。市場が予想していた通りの政策が発表された場合には、発表された金利の数字そのものより、その後の政策方針が株価に強く反映されることがあります。
長期金利
株式市場では、中央銀行が決める政策金利に加えて、国債市場で決まる長期金利もよく見られています。長期金利には、将来の政策金利や物価、景気に対する市場参加者の予想が反映されるためです。
長期金利が上昇すると国債から得られる利回りも高くなり、株式を売って債券へ資金を移す動きが出ることがあります。企業が長期間の資金を借りる際の金利にも影響するため、設備投資や住宅購入にも影響が及びます。
実質金利
金利を見るときには、物価上昇率を考慮した実質金利も使われます。名目金利が3%、物価上昇率が2%であれば、単純化した実質金利は約1%です。
名目金利が同じ状態でも、物価上昇率が下がると実質金利は上昇します。企業から見ると資金を借りる実質的な負担が重くなり、投資家から見ると債券などから得られる実質的な収益も高くなるため、株式の評価が下がることがあります。
金利とPER
株式市場の評価を見る指標の一つにPERがあります。PERは、株価が一株当たり利益の何倍まで買われているかを表す数字で、企業の利益に対して市場がどの程度の価格を付けているのかを見るときに使われます。
金利が低い時期は債券の利回りも低いため、投資家が株式に高い価格を付けることがあり、その結果としてPERも高い水準になるケースがあります。金利が上昇して国債などから受け取れる利回りが高くなると、企業利益が同じでも株式に付けられる評価が下がり、PERと株価が一緒に低下することがあります。
金利上昇の背景
金利が上昇したという結果が同じでも、その背景によって株式市場で意識される内容は変わります。
| 金利上昇の背景 | 株式市場で意識される内容 |
|---|---|
| 景気回復 | 企業の売上や利益の増加 |
| インフレの加速 | 追加利上げや企業コストの増加 |
| 金融引き締め | 借入負担や株価評価への影響 |
| 国債の需給変化 | 市場金利や資金調達コストの上昇 |
景気回復に伴って金利が上昇している時期は、企業の売上や利益も伸びていることがあり、金利負担が増えていても株価が上昇することがあります。インフレへの警戒から金利が急上昇している時期は、追加利上げや仕入れコストの増加が意識され、株価が下がることがあります。
日本株と為替
日本株では、海外の金利変化が為替を通じて企業業績に影響することもあります。米国の金利が上昇して日米の金利差が広がると、ドル高・円安につながることがあり、海外で稼ぐ企業では外貨で得た売上や利益を円へ換算した金額が増えます。
原材料やエネルギーを海外から購入している企業では、円安によって仕入れに必要な金額が増えます。米国の金利上昇が日本株に影響するときは、金利による株価評価の変化と、為替による企業業績の変化が同時に株価へ反映されることがあります。
金利と株価のニュース
金利と株価のニュースでは、政策金利や長期金利がどちらへ動いているのかに加えて、その背景に景気回復があるのか、インフレへの警戒があるのかを見ると内容を捉えやすくなります。企業の売上や利益が伸びている時期には、金利が上昇していても株価が上がることがあり、企業業績が弱っている時期には、利下げが始まっても株価が下がることがあります。
市場が金融政策をどこまで予想していたのかも株価に影響します。利上げや利下げがすでに株価へ反映されている場合は、発表された金利の数字より、その後の政策方針や景気の見通しが重く見られます。同じ利上げでも、景気回復の中で行われるのか、インフレを抑えるために行われるのかで、株価の反応は変わります。
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