金融行政方針とは
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金融庁が毎年策定する文書で、その年度の金融行政の課題や重点政策を示すもの
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事務年度(毎年7月~翌年6月)の始まりに公表され、行政の透明性向上と説明責任の遂行を目的とする
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金融庁自ら、「形式化」や「マンネリ化」を問題視し、近年は双方向性や実効性のある行政方針のあり方を模索している
主な役割
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① 金融行政の方向性提示
→ 行政としての課題認識と取り組みの基本姿勢を明示 -
② 金融機関の監督・検査方針の明文化
→ 預金取扱金融機関・保険会社・証券会社などのリスク管理体制や経営健全性の評価基準を示す -
③ 金融業界・国民への情報提供
→ 方針や視点を広く共有し、対話型監督への転換を促進
具体的な重点施策(例:2023~2024年度)
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企業統治改革
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政策保有株の見直しや企業価値向上に向けた投資家対話(エンゲージメント)支援
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スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードの運用強化
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金融機関のリスク管理
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金利・為替変動、地政学リスクへの耐性チェック
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金融グループによる高度化したリスク管理体制の整備を促す
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地域金融機関の持続可能性確保
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人口減少・高齢化を背景とした事業モデルの再構築支援
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地域企業との協働・金融仲介機能の発揮を促進
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金融デジタル化・イノベーション
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Web3、フィンテック、暗号資産、ESG金融への対応
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金融分野におけるサイバーセキュリティ強化とレグテック(規制技術)導入支援
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その他の特徴
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金融行政方針には近年、「サステナブルファイナンス」や「気候関連財務情報開示(TCFD)」などの国際的テーマも盛り込まれている
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公表後には、「モニタリングレポート」や「進捗報告」が出され、実効性の確認が行われている
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行政による押し付けではなく、対話・共創を軸にした行政運営へ移行しつつある(例:「共通の価値創造ストーリー」策定支援)
今後の展望
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行政手法の再設計(単なる監督から“対話と伴走型支援”へ)
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金融制度改革の国際整合性確保と日本独自の課題(少子高齢化・地方経済)への対応の両立
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金融の社会的価値(社会課題解決への貢献)の視点が今後さらに重視される見通し
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