2025年5月29日木曜日

イールドスプレッドとは

 

  • 株式の益回り(E/P)から長期金利(代表的には10年国債利回り)を引いた値

  • 株式と債券の「投資妙味」の差を数値化したもの

◆ 計算式

イールドスプレッド = 株式の益回り(1株利益 ÷ 株価)- 長期金利(例:10年物国債利回り)

解釈の基本

  • イールドスプレッドが大きい(プラスが大きい)

    • 株式の方がリターンが大きい=株が割安

    • リスクを取ってでも株を買う価値がある水準

  • イールドスプレッドが小さい or マイナス

    • 債券のほうが相対的に有利=株が割高

    • 株に投資するリターンが少なく、リスクに見合わないとされる


◆ 実例・過去の動向

  • 1990年代末のITバブル期:株価高騰で益回りが低下 → スプレッド縮小(割高感)

  • 2008〜09年の金融危機後:株価急落&金利低下 → スプレッド拡大(割安感)

  • 2024年6月〜2025年3月:S&P500で益回り低下+金利上昇 → スプレッドが過去最低水準に接近(=割高の警戒感)


◆ 活用のポイントと注意点

  • 市場の割高・割安を相対的に評価できる便利な指標

  • ただし「金利・株価・業績見通し」すべての影響を受けるため、単独での判断は危険

  • 他の指標(PER、PBR、企業業績、景気循環)と組み合わせて総合的に分析することが大切

2025年5月24日土曜日

FOMOとは

 

FOMOの定義と投資への影響

  • FOMO = Fear of Missing Out(取り残されることへの恐怖)
  • 株価が上昇する中で、「他の投資家より出遅れることへの焦り」から、冷静な判断を欠いた買い注文が増加する。
  • 主に強気相場の中盤~後半に顕在化しやすい。

FOMO相場の特徴

  • 心理的焦燥感:他人が利益を出していることに対する焦りが購買意欲をかき立てる。

  • ファンダメンタルズからの乖離:業績や成長性に対して不釣り合いな価格水準に。

  • 値動きの増幅:ショートカバーやアルゴ取引が加わり、急騰をさらに加速

  • 循環的な買い:「買われるから上がる→上がるからまた買われる」の繰り返し。


実際の市場でのFOMO事例

  • 2024年3月の日本株:日経平均が初の4万円突破 → 半導体株を中心にFOMO買いが発生。

  • 生成AIブームと半導体株:AI需要を背景に、関連銘柄が割高水準まで上昇。

  • 米国FANG+指数の上昇:GAFAMなどの大型ハイテク株に資金集中 → 米国でもFOMO的買いが発生。


注意点とリスク

  • FOMO相場では割高リスクが高まり、調整局面での損失が大きくなる可能性

  • メディア・SNS発の過熱報道による群集心理に注意。

  • 投資では、冷静なファンダメンタル分析・資産配分・逆張り思考も重要。

  • JOMO(Joy Of Missing Out)という逆の概念もあり、「無理に乗らない判断」も戦略の一部。

2025年5月17日土曜日

長期金利

 長期金利とは、一般に「10年物国債の利回り」を指し、長期的な資金の貸し借りに対する金利のことです。長期金利は、住宅ローン金利や企業の資金調達コストに影響を与えるため、経済全体に広く影響を及ぼします。短期金利とともに、金融政策や景気の重要な指標となる。

🔹 主な決定要因

  • 経済状況:成長率・インフレ率・失業率などのマクロ指標。
  • 金融政策:日銀の政策金利や国債買い入れの方針。
  • 国債市場の需給:政府の発行額と投資家の購入意欲。
  • 海外金利の動向:特に米国の長期金利が大きく影響。
  • 市場参加者の期待:将来の経済・物価・政策に対する予測。
  • 日銀のYCC(イールドカーブ・コントロール)終了により、金利はより市場実勢に連動。


🔹 最近の動向(2024〜2025年)

  • 2024年5月:長期金利1.0%に達し、11年ぶりの高水準。
  • 2024年12月:1.1%超、金利正常化への意識高まる。
  • 2025年1月:1.2%視野、円安と米金利高の影響。
  • 2025年3月:一時1.585%、2008年以来の高水準。
  • 2025年5月:1.475%、米中関係や日銀追加利上げ観測が要因。


🔹 経済への影響

  • 住宅ローン金利企業の社債発行コストに直結。
  • 資産価格の下落リスク(債券・不動産・株式)も増す。
  • 金利上昇は円高要因(キャリートレードの巻き戻し)にもなり得る。


🔹 今後の見通し

  • 日銀の利上げ幅・タイミング米国の政策金利動向が鍵。
  • インフレが続けば金利上昇圧力も続くが、景気減速があれば再び低下リスクも。
  • 財政負担(利払い費の増大)や国債需給のバランスも注視が必要。

2025年5月11日日曜日

円安の要因とその相互関係

 金利差(主因)

  • 日米の金利差が拡大 → 円を売ってドルを持つ動きが強まる。

  • 米国の利下げ観測が後退している一方で、日本は利上げに慎重 → 円安継続の要因に。


日本の構造的な需給変化

  • 海外進出企業の利益の現地再投資 → 円への換金需要が減少。

  • デジタル赤字(ITサービス輸入増)の拡大 → サービス収支の悪化 → 円売り圧力。

  • 新NISAによる海外投資拡大 → 円売り・ドル買いの要因。


外部要因・地政学リスク

  • ウクライナ戦争・中東情勢・原油高 → 日本の貿易赤字拡大 → 円安圧力。

  • 資源輸入国としての日本は、原材料コスト上昇が為替に敏感。


日本銀行の金融政策

  • 長らく続いたマイナス金利政策・イールドカーブコントロールが円安要因。

  • 金融緩和の解除が遅れるとの観測 → 円の魅力低下につながる。


相互作用・市場のバランス

  • 為替介入が短期的に円高をもたらすことはあるが、根本的な流れを止めるには構造的対応が必要

  • 貿易赤字=円安要因、旅行黒字(インバウンド)=円高要因として拮抗するケースも。


今後の見通し

  • 日銀の利上げや米国の利下げで金利差が縮小すれば、円高圧力が強まる可能性あり。

  • ただし、構造的な需給変化(海外投資、企業の再投資、デジタル赤字など)が続く限り、円安の基調は簡単に反転しないとの見方も。

スタグフレーション

 定義と特徴

  • スタグネーション(不況)」+「インフレーション(物価上昇)」の複合語。

  • 景気が悪化しているのに、物価が上がり続ける状態。

  • 賃金が上がらないのに物価だけが上昇 → 実質所得の低下 → 消費減退 → 雇用不安 → 悪循環。


主な過去の事例

  • 1970年代石油危機(米国・日本):原油価格の急騰により、物価高と不況が同時に発生。

  • 2016年の英国EU離脱(Brexit):通貨安と労働力流出によるコスト高・成長鈍化。

  • 2022年のロシアのウクライナ侵攻:エネルギー・食料品価格の急騰で世界的なスタグフレーション懸念。


現在の懸念(米国・中国・日本)

  • 米国:関税政策やサプライチェーン混乱によるコスト高、利上げと景気の鈍化が同時進行。

  • 中国:不動産バブル崩壊+消費・輸出の鈍化+輸入インフレのリスク。

  • 日本:物価上昇は進む一方で、賃上げの定着や経済成長には不透明感が残る。


金融政策の難しさ

  • スタグフレーション下では、通常の金融政策が逆効果となり得る

    • 利上げ → 景気後退を悪化させる

    • 利下げ → インフレを加速させる

  • 植田日銀総裁も、政策のタイミングと選択が難しいことに言及。


今後の展望

  • 各国の中央銀行は、インフレ抑制と成長維持のバランスを取りながら政策対応を進めている。

  • 今後の焦点は、

    • 賃金と物価のバランス(実質所得の改善)

    • 地政学リスクの沈静化

    • サプライチェーン正常化

  • スタグフレーション回避には「供給力の回復」と「物価安定化」が重要な鍵

 

2025年5月6日火曜日

オフィス賃料の変化から読み取れること


市況と需給のバロメーター

  • オフィス賃料の上昇は、需要が供給を上回っている状況を示す。

  • 下落は、景気後退や供給過剰の兆しと解釈される。

企業の人材戦略との関係

  • 働きやすいオフィス(立地・設備)への投資が、人材確保の一環として進行中。

  • 賃料の上昇は、優秀な人材を引きつけるための空間づくりと直結。

地域経済の活性度の指標

  • 賃料上昇エリア(例:渋谷区など)では、IT・スタートアップ企業の集積が進む傾向。

  • 地域の経済構造変化や集積効果を読み解くヒントとなる。

働き方の変化を反映

  • コロナ以降のテレワーク普及でオフィス需要が一時減少。

  • 現在は出社とリモートのハイブリッド型に対応するため、再設計されたオフィス需要が増加

  • 賃料は、こうした空間機能の再定義(共有スペース、会議室など)を反映。

建設費・地価の影響

  • 建築資材・人件費の高騰、地価上昇がオフィス賃料に転嫁されつつある。

  • ハイスペックな新築ビルの賃料は上昇傾向が続いている。

市況の二極化とリスク

  • 地域差・ビルスペックによる二極化が進行中(例:一等地 vs 周辺地)。

  • 世界経済の不透明感、金利上昇などの外部要因によって、今後の賃料動向は変動リスクを含む。

  • 空室率の動向とセットで分析することが、実態把握に重要。

サマーラリー

サマーラリーとは? 米国株式市場で見られる季節的な傾向 の一つ 7月4日(独立記念日)から9月初旬(レイバーデー)まで の期間に、株価が上昇しやすいという アノマリー(経験則) 明確な経済的根拠は乏しいが、「 休暇前に株を買う 」「市場参加者の構成が変わる」など、投資家の心理や...