2025年4月24日木曜日

安全資産としての金

 

金が安全資産とされる理由

  • 希少性と実物資産性:供給量に限りがあり、価値がゼロになるリスクが極めて低い。

  • インフレヘッジ効果:貨幣価値が下がる局面(インフレ)でも価値が維持されやすい。

  • 地政学リスク対応:戦争・制裁・国際的な不安定局面では資金が流入しやすい。

  • 無国籍通貨:特定の政府・金融政策に依存しないため、通貨リスク回避手段としても利用される。

  • 短期的には価格が急騰・急落するリスクもあるため、「完全に安全な資産」ではなく、相対的な安定性と捉えるべき。


中央銀行による金需要

  • 外貨準備の多様化として、米ドル依存を減らす動きの一環として金保有を増加。

  • 新興国(中国、インド、ロシアなど)では、制裁回避や信用力の分散が背景にある。

  • 国際決済での金の再評価(脱ドル化)の流れも支援材料。


金価格の最近の動向

  • 2025年に入り、金価格は史上最高値を更新

  • 背景:トランプ政権の通商政策、地政学リスク(イスラエルとイランの対立)、世界的な不透明感。

  • 2024年4月19日:イスラエルによるイラン攻撃報道を受けて金価格が急上昇

  • 金価格は「実質金利」や「ドル指数」にも大きく左右される。


🔹 今後の展望とリスク

  • 世界経済の不確実性が続く限り、金はリスク回避資産として堅調

  • 米国の金利上昇やドル高局面では、金価格が調整されるリスクも。

  • 金価格の高値警戒感と同時に、中央銀行の買い支えが下支え要因になる可能性。

2025年4月21日月曜日

主要な財務指標


PBR(株価純資産倍率)

  • 計算式:株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)

  • 意味:企業の株価が、その純資産(解散価値)に対して高いか低いかを示す。

  • 特徴

    • PBR<1倍:企業が「資産価値以下」で評価されている可能性 → 割安とみなされることも。

    • ただし、資産の質(含み損の有無)やビジネスモデルによって「低PBR=割安」とは限らない。

    • 東証は上場企業に対し、「資本コストや株価を意識した経営」を求め、PBR1倍割れの改善を促している。

  • 純資産に対して株価が低い場合でも、将来の収益が見込めない企業ではPBRの信頼性が下がるため、ROEとの併用が重要


PER(株価収益率)

  • 計算式:株価 ÷ 1株あたり純利益(EPS)

  • 意味:投資家が、企業の利益の何年分を支払って株を購入しているかを示す。

  • 特徴

    • 一般にPERが低ければ割安とされるが、企業の成長性や景気循環業種では異なる解釈も必要。

    • 高PER=成長期待が織り込まれている/低PER=業績悪化の織り込みかも。

    • 日本株の平均PERは14〜16倍程度が一つの目安(業種によって異なる)。

  • PERは**将来利益の予想値(予想PER)**で評価されることが多く、会計方針や特別損益によって実績PERはブレやすい。


ROE(自己資本利益率)

  • 計算式:当期純利益 ÷ 自己資本

  • 意味:株主からの出資(自己資本)を使ってどれだけ効率的に利益を出したかを示す。

  • 特徴

    • 10%以上:高収益企業とされることが多い。

    • 東証は、企業に対してROE8%以上を目安に改善を促す動き。

  • ROEは 「利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ」 に分解できる(デュポン・システム)。
  • 財務レバレッジ(=負債比率)を高めてROEを押し上げることも可能だが、財務リスク増加に注意が必要。

ROA(総資産利益率)

  • 計算式:当期純利益 ÷ 総資産

  • 意味:企業が保有するすべての資産(自己資本+負債)を使ってどれだけ利益を上げているか。

  • 特徴

    • 財務構造に依存せず、経営効率の総合的な評価に適している。

    • 一般にROAが5%以上なら効率的とされるが、業種ごとの差が大きい。

  • ROAはROEよりも保守的な収益性指標であり、資産の重い業種(電力、不動産など)では低く出がち


PSR(株価売上高倍率)

  • 計算式:株価 ÷ 1株あたり売上高(または 時価総額 ÷ 売上高)

  • 意味:1円の売上に対して、何倍の評価が株式市場でされているか。

  • 特徴

    • 利益が出ていない赤字企業でも評価可能な指標。

    • 特に、成長企業・スタートアップ・SaaSビジネスなどでよく用いられる。

    • 一般的にPSRが5倍以上で高めとされるが、業種と成長期待によって適正水準は異なる。

  • 売上が急成長していても収益性が伴わない場合は評価が急落することもあり、注意が必要


各指標の関連性

  • PBR = ROE × PER

    • 株価は「企業の資産の活用効率(ROE)」と「利益への期待度(PER)」によって説明できる。

    • 逆に言えば、ROEを高める or PERを高める戦略でPBRは改善可能。

  • PBR改善のためには、配当性向の引き上げ、利益率改善、自社株買いなどの株主還元策が効果的とされる。


総合的な活用のポイント

  • いずれの指標も単独で判断するのではなく、複数の指標を組み合わせて分析することが重要。

  • 業種特性、経済状況、企業のライフステージに応じて、見るべき指標の重みづけを変える。

  • 成長性(PER・PSR)+効率性(ROE・ROA)+資産価値(PBR)のバランスを見ることが企業分析の基本となる。

2025年4月20日日曜日

消費者物価指数(CPI)

 

消費者物価指数(CPI)とは?

  • 家計が購入する商品・サービスの価格変動を示す物価指標。

  • 総務省が毎月発表。インフレ・デフレの動向を測る目的で使用。


主なCPIの種類

  • 総合指数:すべての品目を含む。

  • コアCPI(生鮮食品除く総合指数):価格変動の激しい生鮮食品を除外。日銀の政策判断指標。

  • コアコアCPI(生鮮食品とエネルギーを除く指数):より基調的な物価動向を見る際に使用。


CPIの経済的意義

  • 金融政策との関係

    • 日銀は、物価安定の目標=CPI(コア)で前年比+2%程度を掲げている。

    • 物価上昇が目標を上回るか下回るかが、利上げ・緩和の判断材料となる。

  • 生活コストへの影響

    • CPI上昇は、家計の支出増に直結。

    • 特に食料品・光熱費の上昇は生活への影響が大きい。


他国との比較

  • 米国では、PCE物価指数が政策判断指標。

  • PCEはCPIよりも支出対象が広く、消費者行動に近い実態を反映する特徴がある。


最近のCPI動向(2024〜2025年)

  • 2024年12月:コアCPI(生鮮食品除く)前年比+3.0%

  • 2025年3月:コアCPI前年比+3.2%

  • 同月 東京都区部:コアCPIが市場予想を上回る伸び


まとめ

  • CPIは、日本経済の健全性・家計の実感・政策判断を測る上で欠かせない指標。

  • 政府・日銀・市場関係者が注目する、生活と経済をつなぐ重要な物価指標である。

2025年4月17日木曜日

円安是正の影響

 物価と金融政策への影響

  • 輸入物価の上昇抑制 → 家計や企業の負担が軽減。

  • インフレ率の抑制 → 物価上昇が落ち着き、安定化に貢献。

  • 日銀の金融政策運営が柔軟に → 利上げ判断に時間的余裕が生まれる可能性。

企業経営と経済成長への影響

  • 原材料・エネルギーコストの軽減 → 特に中小企業にとって収益改善につながる。

  • 実質賃金の改善 → 円安是正により物価上昇が抑えられ、賃金上昇の実感が得られやすくなる。

  • 経営の予見可能性が向上 → 急激な円高ではなく「安定した為替」が望ましい。

国際的な視点でのメリット

  • 日米貿易摩擦の緩和 → トランプ前大統領などが批判した「不公正な円安」への対処。

  • 為替介入の必要性が低下 → 米国が為替操作に敏感な中、日本政府の政策対応の自由度が広がる。

注意点

  • 円安是正の一方で、急激な円高は輸出企業の収益を圧迫するリスクがある。

  • 政策運営には、為替の安定性と企業競争力の維持のバランスが求められる。

2025年4月12日土曜日

企業物価指数

  •  企業物価指数(PPI)は、企業間で取引されるモノの価格変動を示す経済指標。
  • 主に原材料・中間財・最終財が対象で、価格変動を通じてインフレやデフレの兆候を早期に捉える目的がある。

  • 日本では「企業物価指数(CGPI)」として、日本銀行が毎月公表。


CPI(消費者物価指数)との関係

  • PPIは、CPIに先行するインフレ指標とされる。

  • 企業が仕入れコストの上昇を販売価格に転嫁することで、コストプッシュ型インフレが起こる。

  • 転嫁の程度は、消費者の購買力・市場競争の強さによって異なる。


関連指標:企業向けサービス価格指数(SPPI)

  • SPPIは、輸送・情報処理・広告など、企業間で提供されるサービスの価格動向を示す。

  • 物価全体の見通しを把握する上で、PPIとあわせて注目される。


最近の動向(2025年3月時点)

  • 前年同月比+4.2%の上昇:企業物価指数は高止まり傾向にある。

  • コメなど農林水産物の価格高騰が全体の押し上げ要因。

  • 人件費・輸送費の上昇が価格転嫁を促し、食品価格などに波及。


エネルギー価格の影響

  • 電力・都市ガス・水道などの価格上昇も企業物価を押し上げ。

  • 政府の補助金政策が価格抑制要因となる一方、再生エネルギー賦課金は上昇要因。


今後の展望と政策の影響

  • 企業が価格転嫁できるかどうかは、消費者の購買力と市場環境に依存。

  • 政府の補助金政策や日銀の金融政策(緩和の修正など)が物価全体に影響を与える可能性あり。

  • 企業物価指数は、経済動向を先読みするための重要な指標とされる。

2025年4月9日水曜日

相互関税とは

 

  • トランプ米前大統領が提唱した貿易政策構想

  • 目的:米国と貿易相手国の関税水準を同等にする

  • 背景:米国が市場を開放している一方、他国は高関税で保護しているという「不公平感」への対抗。

相互関税の仕組み(構想上)

  • 基本税率:すべての輸入品に一律10%課税。

  • 上乗せ税率:貿易障壁が高い国に対して、追加で関税を課す。

  • 対象範囲:当初除外されたロシア・北朝鮮なども含め、最終的には全世界を対象とする構想。

日本への影響

  • 日本からの輸入品には最大24%の関税が想定された(10%の基本税率+14%の上乗せ)。

各国の反応

  • 中国:報復関税を即時実施。

  • EU:交渉継続を表明。

  • インド・ベトナム:関税引き下げを米国に提案する姿勢。

  • 米国の動きに応じて、各国が自主的な関税政策見直しを検討

経済・政策への影響

  • 物価上昇リスク:輸入品価格上昇 → インフレ圧力 → FRBが利下げ見送り。

  • 貿易秩序への影響:自由貿易体制の見直し・再構築を目指す動き。

  • トランプ氏のブレーンは「貿易秩序の再構成」と位置づけ、従来の枠組みからの脱却を示唆。

2025年4月8日火曜日

インフレと財政余剰の関係

 

インフレが税収を増やす理由

  • 名目GDPの増加により、法人税・所得税・消費税などの税収が増加。
  • 物価上昇が企業業績や個人所得を押し上げる。
  • 2025年度は定額減税の終了も税収増に寄与する見通し。

インフレが債務負担を軽減する理由

  • 貨幣価値が下がることで、過去に発行した国債などの実質債務負担が減少
  • インフレ率2%で政府に約180兆円の利得が発生する可能性。

注意点とリスク

  • インフレに伴う税収増や債務減少に依存しすぎると、財政規律が緩み歳出拡大・減税依存に陥るリスク
  • 実質賃金が上がらない中での物価上昇は国民の負担感を強め、政治的圧力となる
  • 政策対応としての「還元策(給付・補助金等)」の拡大は財政赤字を再拡大させる恐れ。

今後の展望

  • 日銀がマイナス金利を解除し、国債買い入れを減らす方針の中で、長期金利は上昇傾向
  • 政府は、経済成長を支える歳出と、中長期的な財政健全化のバランスが求められる。

2025年4月6日日曜日

VIX指数

 

  • 正式名称:Volatility Index(ボラティリティ・インデックス)

  • 算出主体:CBOE(シカゴ・オプション取引所)

  • 対象:米国S&P500指数のオプション取引をもとに算出

  • 意味:今後30日間の**市場の予想変動率(ボラティリティ)**を示す指標

  • 別名恐怖指数(Fear Index)とも呼ばれる

VIX指数の特徴

  • 値が高いほど投資家の不安やリスク回避志向が強いことを示す

  • 値が低いと市場の安定性が高く、リスク許容度が高い状態を示す

  • 平時は10〜20程度で推移することが多い

VIXの水準の目安(参考)

VIXの水準市場心理の目安
10〜15非常に楽観的・低ボラティリティ
15〜20安定・通常の状態
20〜30やや不安定、警戒感あり
30〜50高い不安感・リスク回避が強い
50以上極端な恐怖状態(例:リーマンショック時は80超)

VIXの活用例

  • リスクの指標:投資家がマーケットの不確実性やリスクを測る材料として活用

  • ヘッジ戦略:一部のプロ投資家はVIX先物やVIX連動ETFでリスクヘッジを行う

  • 逆張り指標としての利用:VIXが高騰したタイミングは「買い場」と判断されることもある

補足

  • VIX指数は実際の株価変動ではなく、「予想される変動率」を表す

  • 通常の株価指数とは異なり、先物市場やオプション市場の需給が強く反映される

  • 日本では「日経平均VI」や「J-VIX(日経平均ボラティリティ・インデックス)」が類似指標として存在


2025/4/4時点(出典:楽天証券)
現在値 45.31 (04/04) 始値 30.12(--)
前日比 +15.29 (+50.93%) 高値 45.61(--)
前日終値 30.02 (04/03) 安値 29.99(--)

2025年4月3日木曜日

年収103万円の壁とは

 

  • 年収103万円の壁とは、パート・アルバイトなどの収入が103万円を超えると所得税が発生するため、手取りが減る可能性があるラインのこと。

  • 主に「扶養内で働く」ことを希望する人々が、この壁を意識して就労調整を行うことが問題視されている。

主な年収の壁

  • 100万円 住民税の課税が始まる(自治体により差あり)
  • 103万円 所得税の課税が始まる。基礎控除(48万円)+給与所得控除(55万円)=103万円
  • 106万円 従業員101人以上の企業に勤め、かつ週20時間以上勤務などの条件を満たすと、社会保険への加入義務が発生
  • 130万円 扶養から外れ、自ら社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する必要がある(企業規模問わず)

年収の壁を巡る政策動向

  • 政府は2025年度の税制改正において、所得税の課税対象ラインを103万円→123万円へ引き上げる方針を決定。

  • 国民民主党は、より大きな引き上げ(178万円への拡大)を主張しており、与党との協議が継続中。

  • 背景には、働き控えの是正や、女性・高齢者などの労働参加促進を図る狙いがある。

今後の展望と課題

  • 年収の壁の引き上げにより、手取り収入が増え、労働意欲の向上が期待される

  • 一方で、税収減や社会保険財源の確保が課題となるため、持続可能な制度設計が求められる。

  • 制度の複雑さが「就労の選択」を阻害しているという指摘もあり、制度の簡素化や周知徹底も今後の課題である。

サマーラリー

サマーラリーとは? 米国株式市場で見られる季節的な傾向 の一つ 7月4日(独立記念日)から9月初旬(レイバーデー)まで の期間に、株価が上昇しやすいという アノマリー(経験則) 明確な経済的根拠は乏しいが、「 休暇前に株を買う 」「市場参加者の構成が変わる」など、投資家の心理や...