中立金利(Neutral Rate)
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定義:景気を過熱も冷却もさせない、中立的な金利水準。
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特徴:
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経済の潜在成長率や物価上昇率に対応して変動する「理論的な金利」。
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直接観測できず、推計によって求められる。
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日本では低水準、米国では2%台半ばと推定されることが多い。
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役割:
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政策金利が中立金利より高い → 金融引き締め(景気抑制)。
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政策金利が中立金利より低い → 金融緩和(景気刺激)。
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政策金利(Policy Rate)
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定義:中央銀行(日銀やFRBなど)が短期市場金利をコントロールするために設定する実際の金利。
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日本の場合:
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「無担保コール翌日物金利」が実質的な政策金利。
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2024年3月まではマイナス金利(−0.1%)、現在はプラス圏に移行済み。
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役割:
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金融政策の直接的な手段として、景気や物価を調整する。
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両者の違いまとめ
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中立金利:経済理論的な「基準点」
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政策金利:中央銀行が実際に操作する「現実の金利」
つまり、政策金利が中立金利に対して高いか低いか が、金融政策のスタンス(引き締め or 緩和)を判断する軸になる。
中立金利の変動
中立金利(Neutral Rate, 自然利子率とも呼ばれる)は 時期によって変動する
🔹 変動する理由
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人口動態の変化
高齢化が進むと投資需要が減少し、貯蓄が増えるため、中立金利は低下しやすくなる。 -
生産性の変化
経済の成長率が高ければ、資金需要が増えて中立金利は上昇。逆に成長率が低下すると中立金利も下がる。 -
リスク許容度・安全資産需要
世界的に安全資産(米国債など)への需要が高まると、中立金利は低下する。 -
財政政策や投資環境
政府の財政拡大や企業投資の活発化は中立金利を押し上げる要因となる。
🔹 実際の推計例(米国)
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1990年代:おおむね 4〜5%程度
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2000年代以降:世界的な低金利環境を反映して 2〜3%程度
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2010年代:リーマンショック後の低成長・低インフレで 1%台まで低下
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近年(2020年代):インフレ圧力や財政拡張により やや上昇傾向 とも言われる
🔹 ポイント
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中立金利は「観測できる数値」ではなく、モデルや統計的手法で推計されるもの。
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したがって、FRBや日銀など中央銀行の推計値には幅があり、常に見直されている。
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