2025年8月22日のジャクソンホール会議での講演にて、パウエル議長は米経済の回復力を評価しつつも、インフレと雇用の双方に不確実性が残る難しい局面にあることを強調した。
経済の現状
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米経済は全体として回復力を示してきたが、2024年前半のGDP成長率は1.2%に鈍化し、前年の半分の水準にとどまった。
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成長の減速は主に個人消費の鈍化が背景にあり、潜在成長力の弱まりも影響している。
労働市場の動向
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労働市場は「最大雇用に近い水準」を維持している一方で、雇用者増加ペースは鈍化。
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移民減少により労働力供給が大幅に低下し、労働参加率も直近で小幅に落ちている。
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現在の安定は「需要と供給の双方が鈍化した結果」による特異な均衡であり、失業率の急上昇リスクが残ると議長は指摘した。
インフレの見通し
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インフレ率は新型コロナ流行後のピークからは大きく低下したが、依然やや高水準。
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直近のデータでは、PCE価格指数が前年比2.6%上昇。関税引き上げによる価格上昇が影響している。
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一方で、長期的なインフレ期待は依然2%近辺で安定しており、賃金・価格の悪循環が現実化する可能性は低いと見られている。
金融政策のスタンス
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政策金利は依然として「引き締め的な領域」にあり、中立金利に近づいてきている。
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雇用が安定していることから、政策変更を検討する際には「慎重に進める余地がある」と発言。
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今後の金融政策は「既定路線」ではなく、データと見通し、リスクバランスに基づき柔軟に決定する方針を改めて示した。
まとめ
今回の講演でパウエル議長は、短期的にはインフレリスクは上向き、雇用リスクは下向きという難しい状況を強調した。市場が利下げや政策転換のサインを探るなか、議長は明確な方向性を示さず、「データ依存のアプローチ」を貫く姿勢を鮮明にした。
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今回の講演は「利下げの示唆ではなく、データ依存姿勢の再確認」。
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現状はまだインフレリスクを優先視しており、利下げの明確な意図は読み取れない。
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ただし、雇用情勢の悪化が進めば、将来的な利下げ判断に傾く可能性はある。
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